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COP28 venue in Dubai on November 30. (©Kyodo)

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国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)が11月30日からアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで始まった。

 

冒頭の首脳級会合には岸田文雄首相も出席する。温暖化防止を目指す脱炭素社会への取り組みは、各国間の熾烈な経済競争と表裏一体だ。その現実を踏まえて協議に臨んでもらいたい。

 

会議の基調を形成する首脳級会合では、太陽光発電などの再生可能エネルギーを2030年までに3倍に拡大する目標が重要テーマになる見通しだ。議長国のUAEの発意である。

 

産油国のUAEに不利な目標とも映るが、発電量が不安定な再エネには発電ムラを均(なら)すための火力発電が不可欠だ。従って世界の天然ガスの需要はなくならない。産油国にとって再エネ拡大はガス・石油輸出との両立が可能な脱炭素政策なのだ。

 

COPへの出発を前に記者団の質問に答える岸田文雄首相=11月30日午後、首相官邸(春名中撮影)

 

それに引き換え日本にとって再エネ3倍は至難である。国土が狭く再エネ施設の追加余地に乏しい。政府は洋上風力発電に期待するが、冬の海上での保守や落雷対策に懸念が残る。

 

しかも日本の電源構成は原発の再稼働の遅れで75%が火力発電だ。地政学的にも制約の多いわが国が、電力の安定供給と脱炭素化の両立を図るには安全性を高めた原子力発電が最適であり、それには原発再稼働への政府の積極姿勢が不可欠だ。

 

COP28では、30年に向けて各国が公約した二酸化炭素などの温室効果ガス(GHG)の削減進捗度が評価される。今世紀末の気温上昇を1・5度に抑えるには30年までにGHGの排出を43%減らすことが必要とされているが、条約事務局によると各国の目標を合わせても2%しか減らないという。

 

「COP28 UAE」のロゴ=1月16日、アブダビ(ロイター)

 

しかも今夏は猛烈な暑さに見舞われた。日本は46%という高い削減目標を公約しているが、先進国には途上国から、さらなる排出削減の積み増しが求められよう。日本がそれに応じるのは愚策である。日本のGHG排出量は世界全体の約3%に過ぎないからだ。アジアに多い旧式石炭火力発電に日本の高効率技術を導入すれば、桁違いのGHG削減に道が開ける。

 

賢明な国や地域は、したたかである。迎合し、無思慮な再エネ拡大やGHG排出削減に走れば、日本の国力はさらに細る。それを忘れてはならない。

 

 

2023年11月29日付産経新聞【主張】を転載しています

 

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